ポリカーボネートとアクリルは、日常生活や産業界で広く使用されています。その透明性や強度などの特性から、用途は多岐にわたります。しかし、見た目が似ているこれらの素材はそれぞれ特性が異なるため、使用目的に応じた適切な選択が重要です。この記事では、ポリカーボネートとアクリルの違いについて詳しく解説します。
ポリカーボネートの概要
ポリカーボネートは、私たちの日常生活で頻繁に目にするプラスチック素材です。そして、多岐にわたる用途で使用されている素材でもあります。
ポリカーボネートは、熱可塑性樹脂の一種であり、マグネシウム、カーボン、カルシウムを原料として製造されます。ポリカーボネートは、プラスチックの中でも最高クラスの強度が特徴的です。
また、その形状のバリエーションも豊富です。平板として使用されるだけでなく、中空構造を持つ形状など、用途に応じてさまざまな形状に加工されています。
アクリルの概要
アクリルも、ポリカーボネートと同様に日常生活で見ない日はないほど普遍的なプラスチック素材です。アクリルは、熱可塑性の汎用プラスチックに分類されています。
加工性にすぐれているため、アクリル板、アクリル棒、アクリルパイプといった多様な形状に加工され、さまざまな用途に対応できます。また、すぐれた光透過性をもっているのが最大の特徴です。ガラスよりも割れにくいため、ガラスの代用品としてよく使用されている扱いやすい素材です。
ポリカーボネートとアクリルの違い
以上のように、両者はどちらも広く使われているプラスチック素材です。しかし、特性が異なる部分も多いので、使用する際には注意が必要です。ここでは、それぞれの特性について説明します。
強さ
ポリカーボネートとアクリルは見た目が似ていますが、耐久性と強度の面で差があります。ポリカーボネートは非常に高い耐衝撃性をもち、アクリルのおよそ50倍の強度を誇ります。
このため、防弾素材や高衝撃が予測される場所での使用には、ポリカーボネートが選ばれることが多いです。一方、アクリルはポリカーボネートほどの耐衝撃性はありません。
しかし、アクリルはポリカーボネートよりも耐擦傷性が高い性質があり、動きをともなう機械部品などに使用されます。
加工性
加工性に関しては、両者ともに秀でていますが、一般的にはポリカーボネートの方がアクリルよりも曲げ加工や接着が困難という性質があります。一方、アクリルは接着剤や溶剤でかんたんに接着できるため、組み立てや修理が容易です。
また、両者は曲げる際の性質に相違点があります。低温でも成形でき、熱を加えずに曲げられるポリカーボネートに対して、アクリルは曲げる際に熱を必要とします。アクリルは熱を加えると曲がってしまう性質があり、正確な曲げ加工時には注意が必要です。
耐薬品性
耐薬品性はポリカーボネートのほうがすぐれていますが、研磨剤入りの洗浄剤やガソリンに強くありません。アクリルは、ガソリンや燃焼にも強いため、特定の化学物質にさらされる環境での使用に適しています。一方で、ポリカーボネートは高い自己消火性を持ち、燃えにくい性質があります。
コスト
コスト面でも違いがあります。一般的に、アクリルはポリカーボネートよりも30%ほど安価です。このため、耐衝撃性がそれほど求められない用途や、頻繁に買い換える必要がある製品にはアクリルが選ばれることが多いです。
一方、ポリカーボネートは比較的高価ですが、高い耐久性や安全性をもたらしてくれます。用途によって使い分けましょう。
美観
美観においては、アクリルがすぐれています。アクリルは、滑らかで光沢のある外観をもち、光線透過率が92%と非常に高いため、ポリカーボネートとくらべてより多くの光を取り込みます。
また、アクリルは研磨して透明性を回復させられるのに加えて紫外線に強いため、長期間の使用でも黄ばみにくいのが利点です。一方でポリカーボネートは、研磨によって透明性を回復させられません。
また、時間が経つと黄ばみやすいため、美観に関してはアクリルに対する強みがありません。
メンテナンス
メンテナンス面では、アクリルもポリカーボネートも洗浄が容易ですが、アクリルのほうが若干秀でています。アクリルを洗浄するには、ぬるま湯と石鹸水を使い、マイクロファイバーやコットンの布で拭くだけとかんたんです。
一方、ポリカーボネートの洗浄には、より研磨する性質が高い有機添加物の洗浄剤を使用する必要があります。
ポリカーボネートとアクリルの選択で悩んだ時の決め方
ポリカーボネートとアクリルは、さまざまな用途で広く使用されているプラスチック素材です。どちらもすぐれた特性をもっていますが、用途や求める性能によって適する素材は異なります。
まず使用目的や環境、予算を明確にしてから、どちらを利用するか検討しましょう。たとえば、耐衝撃性が求められる場合や、屋外での使用を考えている場合はポリカーボネートが適しています。
一方、透明度や美観が重視される場合はアクリルが適しています。また、コストパフォーマンスを重視する場合や、傷や紫外線に強い素材を求める場合も、アクリルが適しているでしょう。ここでは、ポリカーボネートとアクリルの特徴と、それぞれの素材が適している状況について詳しく解説します。
耐衝撃性・耐熱性を利用する
ポリカーボネートは、その高い強度と耐衝撃性が特徴です。その性能は防弾素材としても使用されるほどであり、強度や耐候性、耐衝撃性が重要な場合には非常に適しています。
その特性を活かして、カーポートや屋根材といった、屋外での使用用途で活躍しています。耐候性が高く、長期間の使用でも劣化しにくいので、遮光板や看板といった屋外設備に使うのもおすすめです。
また、アクリルよりは劣るものの、ポリカーボネートは透明度が比較的良い素材です。光を通しながらも割れにくい特性から、カメラやメガネのレンズ、DVD、車のヘッドランプなど、光学部品や衝撃への強さが求められる製品に使うとよいでしょう。
さらに、高温下での使用にもおすすめです。ポリカーボネートは耐熱性が高いため、熱源のすぐそばなど、高温環境下での使用には最適です。
透明度・コスト優位性を利用する
アクリルは、その透明度と加工性の高さが魅力です。アクリルは非常に透明度が高く、光の透過率が92%とポリカーボネートの88%よりもすぐれています。このため、水槽や建具、展示ケースなど、透明性が重視される用途に最適です。
また、滑らかで光沢のある表面は、サインやインテリア、装飾品など美観が求められる製品に多用されています。また、豊富なカラーバリエーションが用意されているため、デザインの自由度が高いのも魅力です。
さらに、アクリルはコストパフォーマンスにすぐれ、ポリカーボネートよりも費用をカットできます。そのため、大量に使用する場合や、予算を抑えたい場合には適した選択肢です。
加えて、アクリルは傷に強く、紫外線に対する耐性にもすぐれています。また、傷もつきにくいため、頻繁に触れる場所や長期間動作し続ける部品などにはアクリルが適しています。
まとめ
ポリカーボネートとアクリルは、ともに日常生活や産業界で頻繁に使われ、それぞれが異なる特性をもっているプラスチック素材です。ポリカーボネートは、高い耐衝撃性と耐熱性があり、屋外使用や防弾材としての用途に適しています。一方、アクリルは、すぐれた光透過性やうつくしい光沢、コストパフォーマンスにすぐれることが特徴で、室内装飾や展示用ケースなどに利用するのが最適です。どちらの素材を選ぶかは、使用環境や求める特性、予算に応じて決めることが重要です。それぞれの素材の特性をしっかりと理解し、最適な用途に活用しましょう。