ポリプロピレンとポリエチレンは、身の回りで広く使用されているプラスチック素材です。食品包装、日用品や工業製品など、多岐にわたる用途で活用されています。一見すると似ているように見えますが、使用される場面が異なる場合もあるため注意が必要です。この記事では、ポリプロピレンとポリエチレンの違いについて詳しく解説しています。
ポリプロピレンの概要
ポリプロピレンは、プロピレンと呼ばれる無色透明のガスを原料として多数重合したプラスチック素材です。数あるプラスチックの中でも軽量で、耐熱性や耐衝撃性にすぐれています。食品包装から機械の部品まで幅広い製品に使用されています。
軽くて丈夫
ポリプロピレンは、樹脂の中でも比重0.9と軽量で、比較的硬く傷がつきにくく丈夫な材料です。薬品に強いという性質から、化学の分野で頻繁に使用されます。
透明性が高い
ポリプロピレンの透明性が高いことを活かすため、コンテナやポリタンクなどによく使用されています。大量生産にも適しており、内容物が見えやすいことから、食品関係の容器にも使用されています。日常生活の中で身近な、汎用性の高い素材です。
ポリプロピレンの種類
ポリプロピレンには、プロピレンに他の素材を混ぜることで作られたいくつかの種類が存在します。まず、ホモポリマーはプロピレンのみを重合したもので、剛性や耐熱性にすぐれるポリプロピレンです。
食品用トレーやフィルム、シートなどで見られます。ランダムポリマーは、プロピレンに少量のエチレンを共重合した素材で、透明度と柔軟さにすぐれる素材です。したがって、透明な箱や透明ボトル、クリーニング袋などに利用されています。
ブロックコポリマーは、ホモポリマーまたはランダムポリマーに細かなゴム成分を均一に配合し、剛性や耐衝撃性、および耐寒性を強化した素材です。ブロックコポリマーはその特性から、自動車の部品などに多く活用されています。
ポリエチレンの概要
ポリエチレンは、エチレンと呼ばれる炭素原子と水素原子からなる無色透明の気体を使用して作られるプラスチック素材です。安定性が高いことから丈夫で衝撃に強く、吸水性が低いため耐薬品性にもすぐれています。これにより、日用品から産業用部品など、あらゆる製品に活用されています。
生産性が高く安価
ポリエチレンは原材料が安価であることから、低コストで大量生産できるのがメリットです。また、構造が非常に単純であるため、加工性のよさも特徴です。
したがって、数多くのプラスチック素材の中でもポリエチレンは生産量・使用量ともに上位に位置しており、日常生活に欠かせない素材といえるでしょう。
吸水性が低い
ポリエチレンは、ポリプロピレンよりも若干重く、比重は0.95です。吸水性が低いため、寸法安定性にもすぐれるのが特徴です。食品包装や洗剤のボトル容器などの容器や、水道管やガス管など、身近な製品から重要なインフラにいたるまで幅広く使用されています。
ポリエチレンの種類
ポリエチレンは、密度の違いにより異なる特徴を発揮する素材です。たとえば、低密度ポリエチレンは、エチレンを高圧で圧縮した低密度のポリエチレンです。密度が低いことにより柔らかさやしなやかさがあり、加工性も高いため、低い温度であれば多くの製品に加工できます。
そのため、押し出して使うマヨネーズやチューブアイスなどの容器や牛乳パック、輸液バッグおよびアンプルなどの医療用保管容器、フィルムやポリ袋など、生活に密着した製品にしようされています。
一方、ポリエチレンを高密度で圧縮するとできるのが高密度ポリエチレンです。低密度ポリエチレンとは異なり、硬く丈夫であり耐薬品性にもすぐれるため、変形してほしくない薬品などの保存容器、研究施設や工場の容器などにも多く用いられています。
ポリプロピレンとポリエチレンの異なる点
ポリプロピレンとポリエチレンは、どちらも現代社会の中で広く利用されているプラスチック素材ですが、その特性にはいくつかの重要な相違点があります。違いを理解することで、素材をより有効活用できます。
耐熱性
ポリプロピレンとポリエチレンのもっとも異なるポイントは耐熱性です。ポリプロピレンは耐熱性にすぐれており、高温での使用や滅菌処理が必要な用途に適しています。これに対し、ポリエチレンは比較的低温での使用に適しており、高温環境では変形しやすいため適していません。
成型性
成型性においても違いがあります。ポリプロピレンのブロー成形は難易度が高く、ポリプロピレン製のブロー成形品は少ないです。一方、ポリエチレンはブロー成形に適しているため、ポリエチレン製の容器やボトルは非常に多く見られます。
速乾性
ポリプロピレンは速乾性にすぐれています。繊維として紙おむつや衣類などに加工することで、その速乾性を発揮します。
硬さ
ポリプロピレンは硬い樹脂なので、衝撃への強さや剛性が必要なケースに使うとよいでしょう。対してポリエチレンは軟らかい樹脂なので、柔軟性が求められる製品に使われる素材です。
耐候性
ポリプロピレンは耐候性が悪く、紫外線にさらされると変色や変形しやすいのが特徴です。とくに屋外での使用には注意が必要です。これに対し、ポリエチレンは耐候性がよく、屋外でも多く利用されています。
色
ポリプロピレンは透明度が高く、中身が見えやすい特性により、食品関係の容器やフィルム、シートとして広く使われています。一方、ポリエチレンは半透明で乳白色のため、中身が見えにくくなり、ときに包装用途に適さない場合もある素材です。
ポリプロピレンとポリエチレンの共通点
ポリエチレンとポリプロピレンは、現代社会において非常に多用途に使用されるプラスチック素材です。両者には多くの相違点がありますが、同時に共通点も多く存在します。
高い成形性
ポリエチレンとポリプロピレンは、どちらも熱で溶け出すプラスチックであり、さまざまな形状に成形可能です。この特性により、射出成形、押出成形、圧空成形、真空成形など、幅広い成形方法に対応できます。
また、これらの素材は単純な構造であるため、安価に大量生産できることも大きな特徴です。高い機能性をもつ安価な素材として、食品包装、日用品、産業用部品、医療機器、電気機器など、幅広い分野で特性が活かされています。
低い吸水性
ポリエチレンとポリプロピレンは、どちらも吸水率が0.01%以下であり、ほとんど水を吸い込まない素材です。水分を吸収しにくいため、寸法の安定性にすぐれます。この特性により、水分が染み込むことが少なく、研究機関や企業の開発部門で使用される薬品容器として適しています。
軽量
ポリエチレンとポリプロピレンは、どちらも非常に軽量な特性を活かし、広く利用されている素材です。軽量であることは輸送コストの削減や製品の取り扱いやすさに直結するため、多くの産業分野で重宝されています。
絶縁性
ポリエチレンとポリプロピレンはどちらも絶縁体であり、電気を通しにくい性質をもっています。このため、高周波材料としても適しており、電子レンジ内で発熱しないのが特徴的です。これにより、調理時のラップをはじめとした電気機器関連の素材としても利用されています。
無臭・無毒
ポリエチレンとポリプロピレンは無臭で無毒な素材です。これにより、食品包装や医療分野など、安全性が求められる用途にも広く使用されています。
まとめ
ポリプロピレンとポリエチレンは、いずれもプラスチック製品に使用されることが多く、日常生活や産業界で重要な役割を果たす素材です。ポリプロピレンは透明度が高く、丈夫なため、機械部品や食品包装に多く使用されます。一方、ポリエチレンは吸水性が低く、耐候性が高いことから、水道管やガス管、食品などの容器に適しています。用途に応じて適切な素材を選ぶことで、製品の品質向上につながるでしょう。